味覚障害

 私は、定期的に感情が死ぬ。感情が死ぬのは、大体が理不尽さに触れた時だ。例えば、いじめが起きていたとする。いじめが起きて、被害者生徒が我慢に我慢を重ね、最終的に加害者生徒を殴ったとする。そこで「殴った」という事実だけが切り取られ、被害者生徒が退学処分になったとする。何が「事実」かを決定する力を持っているのは、いじめっ子だ。このような構造を見かけてしまうと、もっというと自分の身に降りかかってくると、世界から感情が消え、人間も含めた万物が歯車のように世界の部品にしか見えなくなってくる。

 

 こうなると、自力では抜け出せない。好きだったものの「味」が分からなくなり、「好きだったはず」という記憶を頼りに好物を口にしたりするが、もうその気持ちは思い出せない。

 

 「つらかったね」の一言で、人間の優しさを思い出すこともある。自分が間違っていたと気づくことで、謙虚さを思い出すこともある。子供に無条件の愛を注ぐことで、自分が救われることもある(私は、放課後デイサービスでアルバイトをしていた。)。

 

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