2023-01-01から1年間の記事一覧

【小説】檻のなかのクリスマス

ある寒い冬の夜、サンタクロースは世界中の子供たちにプレゼントを配って回っていました。 サンタクロースが道端で、次に訪ねる家の場所を確かめていると、おまわりさんに声をかけられました。 「そこのきみ、なにをしているのかね」 サンタクロースは正体を…

【小説】ドムと傘

こぐまのドムは、駄菓子屋さんに来ています。お母さんから貰ったお小遣いをもって、おやつを買いに来たのでした。 しかし、森から街に降りてくる頃、雨がポツリポツリと降りはじめ、駄菓子屋さんに着く頃にはザアザア降りになっていました。 「ごめんくださ…

【小説】ペス

雨が降る5月の午後、たばこ屋の軒先で、一匹の野良犬が雨宿りをしていました。野良犬は、何日もごはんを食べていなかったので、なにか残りものをもらえないかと思って商店街へやってきたのでした。しかし、ここ何日も雨が降りつづいていたため、客足が遠のき…

【小説】真っ黒なスカビオサ

しろうさぎの村に、いっぴきのくろうさぎが生まれました。「呪いの子じゃ」しろうさぎのおばあさんはそういうと、生まれたばかりのくろうさぎを、村の片隅にある薄暗い小屋の中に閉じ込めるようみなにいいました。 なので、くろうさぎは、大きくなった今も、…

おわり

高校を卒業した後、束縛ストーカー野郎に捕まった。風俗やAVの話ばかりするやつで、少女漫画育ちの私は一緒にいるのが辛かった。しかし、彼の誘いを断ることが出来なかった。どうにかこうにか逃げ出して、ケータイも着拒しても、教えてない家電に着信が来た…

続・失恋の優しさ

以前、失恋の感覚が好きだ、という話をした。それが自分の中で深化した感覚があるのでもう少し言語化してみたい。 私は、あまり音楽の善し悪しがわからない。周りの音楽をやっている人間から勧められた曲・アーティストを聞いたりはするが、大体が「なんとな…

サンタ感 ver.0.02

初期の記事は比喩や表現がぬるいな、と読み返して思うので、書き直していきたいです。 幼少期、私のところにサンタクロースがやってきた。 幼い私はプレゼントを貰えて嬉しかった反面、おじいさんが身銭を切ってプレゼントを買い、寒空の下世界中の子供たち…

健全な魂

「仲良くしている女性」が、健全な魂になりたい、と言っていたことがある。ニュアンスとしてはわかったが、全く同じものを共有できているかはよくわからなかった。 最近、プライドをなくす方法について友人と話した。方法についてはおいていおくが、結論とし…

驕り芸

私は褒められることが苦手だ。褒められると居心地が悪いし、どうリアクションしたらいいのか未だによくわからなくなる。しかし、褒められることが苦手な根幹の理由は、その場の空気の気まずさではなく、「褒められることを自分が許せない」からであろう、と…

ケア

「ケア」という行為について考えることがある。 私は、自分をケアをする側とされる側に分けるとすると、圧倒的にする側だな、と最近気づいた。もちろん、ケアとはされている最中はそのことに案外無自覚なものであり、している時は「やってやってる」感が出て…

町田康『告白』

中学の時、一切勉強をしていなかった。学年が上がる際、数学の教師に呼び出され、「どうにかなると思ってるだろ」という旨の説教を受けた。 大学を休学していた時期、学費を稼ぐため介護のアルバイトをしていた。最初に勤めていた会社の直属の上司に、「なん…