サイコパスイッチ

 恐怖を感じないことがある。怒鳴られている時や、他人に陰口を叩かれている現場に遭遇した時、人前で発表する時なんかに、スイッチが入る。板についた作り笑いを浮かべ、その場の行動の最適解を考え、自分の感情と行動を切り離せる。

 先ほど、アルバイトの面接を受けてきた。これまでの経歴や現在の生活について聞かれ、テキトーに誤魔化しながら応答をした。途中から、店長の人の目の奥から、うすら笑いを感じるようになった。恐らく、私の受け答えの嘘を見抜かれた。作り笑いも、感じのいい挨拶も、ハリボテなのが、見抜かれた。

 優しさを思い出せない。些細なことで、他人と口論してしまう。物に当たって壊してしまう。去年、アルバイト先のお局にいびられて、キレてバケツの汚水をぶっかけて飛んだ。明らかに、以前の人格と変わってしまった感じがある。病院に相談しても、なあなあに流されてしまう。

 本当は、9個も年下の女の子に縋っていることが間違いなのだ、と思うことがある。ささやかな恋愛をさせてくれただけで、感謝すべきなのだ。私たちの道は、最初から交わる運命ではなかった。環境のせいだとしても、この人生を選んだのは自分なのだから、自分でケリをつけるべきだ。

 自分の人生を進めることができない。終わらせることもできない。誰かに頼って負担をかけるわけにもいかない。立ち止まってもどんどん差が開く気がして焦る。

 そのことも、怖くなくなりかけている自分がいて、怖い