愚痴

 今はそんな気はないのでテキトーに聞き流して欲しいが、2時間ほど前、年に数回ほど訪れる、私の「死にたい欲」が多少本気になっていた。

 最期の言葉をしたため、首に縄を回し、「さぁ」というところで踏ん切りがつかない。死ぬ時に最後まで残る感覚は聴覚だという話を思い出し、何かを聴きながら死のうと思い、アニメの好きなシーンや音楽を流しながら首に縄を回したまま10分ほど目を瞑っていた。

 大変気持ちがよかった。音楽のリズムが、歌詞が、これまでにないくらい身体に染み渡った。「これだ」と思った。この感覚と一体化したい、この平安の中で永遠を過ごしていたい、そう思った。

 死ねなかった。人が近づいてくる気配がして現実に引き戻されたのと、首に縄を回した状態でこのまま前に倒れれば、目の前の平安が消え去り苦痛がやってくるのがわかったからだ。

 私は普段頭の中がとてもうるさい。様々な考えや、概念や、衝動がせわしなく動き回っており、ゆっくり休むことができない。頭から追い払おうとしても、それらは脅迫的に私に世界を突き詰めさせる。私がそれらから解放されるのは、大学を休学したり、辞める決意を固めたり、他人との縁を切ったり、やはり死のうとした時だけだった。

 現実に帰ってきた今、死ぬ気はないが何のために生きているのかもわからない。元々進めたい作業があり、資料を持って学校にきていたが、それらを手にする気は起きない。

 この夏、古着のコートを3着買った。秋になってそれらを着るのを楽しみにしていたことを思い出した。だましだまし、次のシーズンまで生きる理由を持ち続けておくしか今はできない。あの平安が、日常と両立できるようになりたい。