安心感信頼感

 最近親しくしてくれている女性がいる。同じコミュニティに所属しており、お昼ごはんか夕ごはんを食べながら、あるいはお昼と夕ごはんを食べながら、他愛もない話をする関係が一月ほど続いている。なんとなく同じタイミング、同じ場所で過ごす時間をほぼ毎日持つのが暗黙の了解のようになっており、月の半分以上は会っているのではないだろうか。

 私は恋愛感情というものをあまり信じておらず、いつかは冷めるもの、冷めたら相手から手のひらを返すようにつめたい扱いを受けるもの、という感覚がずっとあった。その女性が私のことをどう思っているのかはわからない。私はその女性に明らかに恋愛感情をもっている。今までの私だったら、自分が誰かに愛されている状態にも、愛されているかどうかわからない状態にも耐えきれなかっただろう。おそらくその女性と距離を取ってしまうか、不安が暴走してしまい、自滅的な自爆をしていた。しかし、今回は謎の穏やかさがあり、恋愛として発展しなくてもよい人間関係を築けるであろうという確信があり、安心して毎日を過ごしている。

 先日、妹と喧嘩をした。理不尽な八つ当たりを受けたと思っているし、今までもそのようなことは多々あった。私は若い頃の自分が妹(の家庭環境)へ与えた影響や、自分一人だけ教育リソースを割かれたこと(望んでいたことかどうかは置いておいて)に対して後ろめたさがあり、実の両親がやってこなかった「帰る場所」を大学に入ったくらいから妹に対して意識的にやってきたつもりだ。ある程度の理不尽は、過去の自分への罰として、また、妹が幼少期に得られなかった「甘え」として受け入れてきたつもりで、また、逆に理不尽が過ぎる時は(お互いに)諌め合うような関係を築いてきたつもりだ。しかし、件の喧嘩で「ライン」がわからなくなり、どこまで許容すればいいのか、もうお互い独り立ちする時期なのか、それは無責任な「見捨てる」行為なのではないか、といった思考や感情が溢れてしまい、涙が止まらなくなった。今、妹と一回距離を置こうと言っている。人生で初めてのことだ。

 泣きながら最初に感じたのは、「その女性に会いたい」という思いだった。恋愛感情ではないかもしれないが、一定の優しさや、もしかしたら愛情のようなものを示してくれてる存在に生まれて初めて出会った。本当に弱っているときに話を聞いてほしい、話せなくてもいいから側にいてほしいと、誰かに対して心の底から感じたことなど今までなかった。

 親や、彼氏から理不尽な扱いをされる度、妹は泣きながら私に電話をかけてきた。きっと、きちんと「愛情」を妹に対して示せていただろうと、妹もそれを感じてくれていただろうと今なら思える。妹は今や就職し、自分で生計を立てている。私より独り立ちができている。もはや私の「庇護」は必要ないのかもしれない。妹と適度に距離を保ちつつ、私は、自分の望む人生を、自分を愛してくれる人を、求めてもよい時期がきたような気がしている。