はじめに言葉ありき

 高校に碌に通っていなかった。人生に目標はなく、やりたいこともなく、なりたい自分もなく、お昼ごはん代で一日一冊漫画を買い、駅のベンチなどでそれを読み、部活の先生と喋りに学校へ行く。そんな暮らしをしていた(あと一単位落としていたら高校は留年だった)。

 朝起き、スッキリを見終わって家を出ようかという頃に、当時実家で飼っていた犬(ももちゃん)が甘えてくる。甘えてくるももちゃんを無下にもできず、頭やらおしりやらなで回していると、行かないで、とばかりに膝の上から動こうとしない。可哀想なので膝の上に乗せておいてやる。気づけば昼過ぎである。そんな暮らしをしていた。

 最近、言葉がスラスラ出てこない。感情の輪郭がぼやけており、「あの感じ」そのものだけが存在している。ももちゃんを撫でていたときの一体感そのもの。悲しいような、嬉しいような寂しさが、胸の底で波打っている。

 空腹とは寂しさそのものなのかも知れない。小さい頃、なにも食べずにずっと一人で過ごしていた。思春期、お腹は空かせていたけれど、この世界は無限だと思っていた。夜遅くまで好きな女の子を待ち、一緒にお弁当を食べる日々の温かさ。

 最近、人生に諦めがついた。もがくだけもがいた。足掻けるだけ足掻いた。あとは、穏やかに一日三食少しのごはんを美味しく食べて、言葉なんか忘れて生きていきたい。

 

よい人生だった。